ミウラさんの友達(2022)
益田ミリさんマンガデビュー20周年の記念の書下ろし作品
マガジンハウスより2022年に発行されている漫画です。

今まで読んできた益田ミリさんの作品の中で一番不思議なお話だと思いました!
何も予備知識が無いまま読み始めたので、タイトルと、最初の数ページ、そして読み進めていってからのギャップの衝撃がわすれられない一冊です。

最初の驚きをぜひ体感してみてほしい!
物語の核心に触れたネタバレの感想は、読みたい方だけご覧ください。

思いが溢れすぎて長文になっています。ごめんなさい
あらすじ

不思議なルームシェアのはじまり
転職6年目のミウラさんは不動産屋で部屋探しをして、新居を決めます。その不動産屋では新居に飾るアート作品の委託販売もしているすこし変わったサービスがありました。
ミウラさんはその中の1つが気になって、迷った末に100万円で購入してみることにします。そして友達と2人でルームシェアすることになります。
ネタバレなしの感想
読んでいる時、気が付いたら泣いていました…。淡々としてて、時に明るいタッチなんだけれど寂しくて儚いお話でした。
益田ミリさんの本では、いつも心を支えてくれるような言葉があちらこちらに潜ませてあって元気がでます。
この本はそれとはまた趣が異なる気がしました。ただ元気がでるというのではなく、切なさとか儚さとかそういう印象の方が強く残りました。
『ブラームスはお好き』
ちなみに、作中に1959年の作品フランソワーズ・サガン『ブラームスはお好き』のセリフが登場します。私はこの作品を読んだことがなく、あらすじだけ読んだのですが、若い男性と中年男性の2人の間で揺れ動く女性のお話でした。
若くして1度離婚した後、現在は装飾デザイナーの職につき経済的に自立した39歳の独身女性ポールが主人公。
互いに束縛せず、同棲もせず、お金の貸し借りもなし、という約束のもと、同じ独身の中年男性ロジェと交際を続けてきたポールはある日、若く心優しい25歳の青年シモンに出逢う。
Wikipedia 『ブラームスはお好き』より
フランスの昔の小説から引用するのおしゃれですよね!
割にすきだっていうことと、もうぜんぜん好きでなくなるっていうことと、そのテンポは早くすすむもんだ
『ミウラさんの恋』『ブラームスはお好き』
気づいたときには恋に落ちているんですよねぇ…。

追記
最近読んだ益田ミリさんの沢村さん家シリーズのスピンオフ『ヒトミさんの恋』(2023)で『ブラームスはお好き』に関するエピソードが登場していました。私の中ではそこで伏線回収されました!!
心に残った言葉
仲の良かった友人との心のすれ違い
小さなヒビからパリンと簡単に割れてしまう
『ミウラさんの友達』ミウラさんのセリフより
仲の良かった女友達とすれ違ってしまうというテーマは、益田ミリさんの別作品『すーちゃん』でも描かれています。
『すーちゃん』では、独身であるすーちゃんと、かつて仲の良かった既婚で赤ちゃんを育てているまいちゃんの2人の関係でした。
二人は仲が悪くなったというよりは、互いのライフステージが異なってしまった為に以前ほど密な関係ではいられなくなってしまい、それを互いに”寂しい”と感じています。
今回のミウラさんとチカちゃんは、詳細は明かされてはいないけれどチカちゃんのお悩みメールに対して「悩むほどのコトじゃないって(笑)」とミウラさんが返信したことによりこじれてしまったようです。
ミウラさんがチカちゃんに怒っている理由を聞いてみようかとも考えたけれど、それを止めたのは
彼女(チカちゃん)が一途、悪く言えば頑固で、”自分(ミウラさん)と友達では居たくない”と彼女が決めたことが、仲の良かった自分にはよくわかるから。
そして、彼女のそんなところがむしろ好きなところだったから。

ミウラさんは距離を置かれてしまった訳ですが、仲が良かった友達だからこそ、チカちゃんが自分を遠ざける決断をしたのだろう、ということが分かり、そういうチカちゃんの潔さみたいなところが自分は好きだから、怒っている理由を聞いて繋ぎとめないことを決めたのですね。
会えない時は会えない
また会える時は会える
『ミウラさんの友達』お母さんのセリフより
そして、お母さん自身んお友人関係についてお母さんが話した言葉です。

ちなみに、女友達との関係について、『すーちゃんの恋』でもたくさん話しているのでぜひこちらも読んでみてください♬
ネタバレありの感想


あらすじでは触れなかった核心についてふれているので、まっさらな気持ちで楽しみたい!という方はぜひ、こちらは読まず、本をお手にとってみてください!読後に読んでもらえたらうれしいです!
あらすじ
ミウラさんが不動産屋で購入したアート作品はリアルな人間型の等身大の女性のロボット「トモダチ」でした。そして、そのロボットと新居で暮らすことになります。

「トモダチ」は4つの言葉が初期登録されていました。5つ目の言葉は購入者が決められるようになっていました。相手の顔をみてどの単語を発するかを判断すると不動産屋さんから教えられます。
今日あったことを話したり、2人でピクニックにでかけたりします。周りの人からみるとロボットとは気づかれません。
ある日ミウラさんは職場が同じカジさんとカレー屋さんのランチで出会います。
カジさんはスタンフォード大で人工知能を学んでおり、カジさんこそが「トモダチ」の作者でした。そして、不動産屋さんはカジさんの兄で、「トモダチ」を販売する人の条件”大切にしてくれそうな人”を見極めていたのでした。ミウラさんもカジさんも互いにそのことには気づきません。
カジ兄弟には小さな頃に亡くなった妹のマユがいました。「トモダチ」はマユを投影したロボットということがわかります。今生きてたらどんな大人になっていただろう?という気持ちから作られたようです。

以下感想です!
物語の冒頭、テーブルに向かい合って二人の女性が座っています。
ミウラさん「ルームシェアするなんて思ってもみなかったな」
髪の長い女性「そうなの?」
そして家の近所をお散歩する描写に移ります。
しばらくして、不動産屋での場面が回想されます。そこで髪の長い女性が「トモダチ」というロボットであることがわかります。
これが、現実世界であったら怖い気がします…。作中ではミウラさんが怖いと思ってたけど「思ってたより怖くない」と言っています。作者がこの作品を怖いと思ってほしくなかったのかもしれないという所まで考えます。実際、作者のカジさんは妹のマユを投影しているので、怖いとは思ってほしくなかったのでしょう。

ミウラさんは終始「トモダチ」の作者がどんな気持ちで作ったのかに思いを馳せます
カタカナ表記の名前
この物語、名前の表記がミウラ、カジとカタカナ表記なのも、このお話にSFっぽさを足すエッセンスになっていると感じました。(多くは読んだことはないけれど、星新一のショートショートを思い出しました。)
バックギャモンと小説

バックギャモン、また出てきた!と思いました。
バックギャモンとは双六を使うボードゲームで、世界の競技進行3億人ともいわれていますが、日本では知る人ぞ知るゲームだと思います。

村上春樹さんの小説『1973年のピンホール』米澤穂信さんの小市民シリーズ『夏季限定トロピカルパフェ事件』でもちらりと単語がでてきます。
別の小説でも文章の中に出てきた気がするのですが、思い出せませんでした…。日本語では馴染みのない音の羅列と表記した時のインパクトが強烈で、小説の中に登場するといい味をだす言葉です。
『ミウラさんの友達』の中でも、途中から追加されるゲーム機能として登場するのですが、SFっぽさが増していてアクセントになっています。
5つ目の言葉
あなたなら、5つ目の言葉は何にしますか?
終盤、リアルな人間関係に傷つくのが怖かったから『トモダチ』を買ったというミウラさんは、「やっぱりまた人間の友達と出会いたい」と手放すことにします。
最後に電車にのって2人で海辺へでかけます。そして写真をとって、トモダチを返送するときにそっとポケットに忍ばせるのです。
帰ってきたトモダチに「おかえり」といって、写真を見つけます。窓の外には月がでており、トモダチは「きれい」と呟くのでした。

直前のシーンで、不動産屋のカジ(兄)が返却されたことに対して「そのロボットどーすんの?」と聞き、作者のカジ(弟)が「処分するわ」と答えています
一編の映画を見終わったような余韻
”処分する”というのは、モノに対して使う言葉です。妹を投影したロボットに対して使うにはとても鋭くて辛い単語だと思います。「トモダチ」の存在そのものが、大人に成長するはずだった亡き妹に対する未練というか癒えない悲しみや執着を表していて、いつかは区切りをつけなければいけない存在だったのでしょう。
ミウラさんの手に渡り、本当の友達のようにピクニックや海へ出かけ、妹が経験するはずであった未来をトモダチが見せてくれた。そして、最後に作者へ向けた海の写真と、5つ目に登録した言葉を知り、電源を落とすことができた=妹への気持ちが昇華された瞬間だったのだなと読みました。

ちょっと詩的表現で気恥ずかしいのですが、静かな夜の海に月が浮かんでいる美しい景色が浮かぶような切なくて美しい余韻です。

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