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益田ミリ『スナックキズツキ』傷ついた人が吐露する場所があること

読書

原田知世さん主演で2021年にドラマ化もされた作品です。

マンガには登場しない人物もいて、ドラマ版もとても面白かったです。

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傷ついた者しかたどりつけないスナック

傷ついた者しか

たどりつけない

スナックが

都会の路地裏に

あるらしい

『スナックキズツキ』p12

アルコールが置いてないスナック

毎話登場人物が変わっていくのですが、あるお話で登場したモブキャラが、別のお話では主人公になるといった形で進行していきます。

そして、皆それぞれにモヤモヤがあったり、傷ついていたりしてスナックキズツキにふらりと入っていくのです。

一番初めのコマは、部屋の中で女性が背中を向けて電話をかけています。

彼女はコールセンターに電話をしていて、責めるような口調で話し続けています。

その電話相手はコールセンターで勤務をしている女性のナカタさんでした。

電話口から聞こえる高圧的な態度の相手に疲れを感じるナカタさん。

そんな彼女はふらりと路地裏のスナックに入るのでした…。

カウンターに座ると、店主にマイクを渡されてカラオケに誘われます。

何を歌えばいいのか店主に聞くと、

「今のアンタの気持ちだよ」

コールセンターで働くナカタさんは気持ちを吐露する歌を即興で歌うのでした。

しかも、伴奏は店主トウコによるギター生演奏

10名のお客さんが1人ふらりとやってきては、タップダンス、エアギター、ピアノ、朗読などトウコに誘われるがままに各々が吐露するのでした。

唐突なミュージカル展開に面くらいますが、

だんだん慣れてきて最終的に欲してくるから不思議!

まさに益田ミリワールド全開です!

隣の座席の他人もきっと何かに傷ついている

コールセンターのナカタさんにクレーマーのような電話をかけていたのは、お惣菜売り場で働くアダチさんでした。

アダチさんもまた、お客さんにモヤモヤしたり、同僚にモヤモヤしたりしているのでした。そして仕事終わり、満席の電車では隣のサラリーマンが大股を広げ着席しており、肩身狭くして帰路につくアダチさん。

アダチさんもまた、スナックにふらりと立ち寄って自分の心の中をピアノの弾き語りでさらけだします。

そして、アダチさんの隣にすわっていたサラリーマンにも、また物語があったのでした。


先日、私は久しぶりに平日の朝の通勤ラッシュの電車に乗り込みました。

肩がドンっとぶつかっても、何も言わない。

みんなが同じ痛み(息苦しさ)を共有しているので(お互いさま)もはや謝罪なども行われないことが共通認識されている殺伐とした特殊空間なのかなと思いました。

もし、これが日曜で楽しい予定に向かう電車内だったら?となりに友達や好きな人がいたら?きっと肩をぶつけてきたあの人も「すみません」と言うのじゃないかなと思いました。

普段私たちが生活して出会う、モヤモヤしてしまうあの人も、イライラしてしまうあの人も、悪意がある態度に見えるあの人にも、それだけがその人ではなくて、一面に過ぎず

きっと何かあるんでしょう。

職場のイライラをコールセンターにクレームを入れることで発散するアダチさんのように、

見えないけれどそういう負の連鎖があるのだろうと思います。

優しさの連鎖をテーマにした映画に

『ペイ・フォワード(可能の王国)』があります。

いつか見る機会があったら是非。

自由に気持ちを吐き出せる場所がありますか

スナックキズツキに出てくる人々は、

日々のモヤモヤやイライラを、色々なかたちで吐き出します。

ひとしきり歌って店を出たあとは我に返り、何してたんだろう…と思いながら

でも店に入る前よりもスッキリとした顔でまた日常に戻っていくのでした。

北欧のコーヒー、氷もリンゴジュースでできている、リンゴジュース。

ココア、ラッシー。出てくるドリンクも飲みたくなります。


”スナックキズツキ”のように、悲しみや苦しみを吐露する場所がみんなにあったら、どんな世界になるんだろうかと考えました。

私の場合には、このブログが吐露する場所になっています。

あなたには吐露する場所がありますか?

スナックキズツキの場合には、店主のトウコが受け止めているようで、受け流しているようにも感じました。

店主のトウコは自分(来店者)のことを全く知らない通りすがりの傍観者だから、どう思われるかなんて考えずに一緒に歌って踊って、後をひかない関係。

それが心地いいなと思いました。

トウコにしても、そのひと時を客と共にするだけで、深く受け止めたり、一緒に悩んだりしないのだろうなと思うのです。(そんな描写はありませんが)

印象的なシーン

メイちゃんという女子高校生が登場します。

外は雨が降っていて、スナックキズツキの軒先で雨宿りをするメイちゃん。

将来って

今より大事なんですか?

(中略)

忘れたくないんです

17才の自分を

全部まるごと

これに対して、トウコが答えます。

今のあんたを忘れないための

簡単な方法

思いついた

キョリにして50cm

『スナックキズツキ』p204

この後、トウコは何と言ったでしょうか?

私の一番好きなシーンです。ぜひぜひ読んで確認してみてほしいです!

将来の不安、今の自分を丸ごと忘れたくないというメイちゃんが一生忘れないドラマチックな瞬間だなと思いました。レモンの砂糖漬けのような1シーンです。

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