横尾忠則さんの密着特集番組
『全身芸術家 横尾忠則88歳』初回放送日:2025年5月5日
この春、横尾忠則さんが、画家人生最後の大仕事と位置づけた展覧会を開く。2年足らずで60点以上の大作を描き上げた。老いの常識を軽やかに覆す全身芸術家の創作の世界。
NHK 番組紹介ページより
NHKの特集番組が好きで、たまに録画しています。
横尾忠則さんについては恥ずかしながらよく知らなかったのですが、番組が始まって映し出された過去の作品は見覚えがありました。
赤・黄・青のビビッドな色に浮世絵のような雰囲気で、現代の絵が描かれている
そんな印象の絵。
一度見たら忘れられないような強いインパクトがありました。
横尾 忠則(よこお ただのり、1936年6月27日 – )は、日本の美術家、グラフィックデザイナー、版画家、作家。
Wikipedia 横尾忠則
番組でも触れられていましたが、土方巽 唐十郎 寺山修司などと交流があり、特に1960年代三島由紀夫とは強い結びつきがありました。

歴史に名を残しているそうそうたる方々と交流をもっていたのですね。私は土方巽さんを知らなかったのですが、有名な舞踊家の方でした。
番組内で印象的だった横尾忠則の言葉たち

何の気なしに見始めたら、現在も個展に向けて精力的にキャンバスに向かう姿に圧倒されました。
大きな窓から緑が見えるアトリエで、自分よりも大きなキャンバスに大胆に描いていく姿が印象的でした。
Y字路の右でも左でもどっちでもいい

番組で密着していたディレクターの二瓶剛さんと横尾さんのお話の中で、私に刺さった言葉があり、それを忘れたくないのでここに残そうと思います。

番組の中で、横尾さんが二瓶さんに声を荒げる場面もありました。
一方、二瓶さんが仕事の中で迷いがある中で横尾さんから温かい言葉をかける場面がありました。密着する中でお二人にはある種の絆がうまれたからこそ出た言葉だったのかもしれません。
二瓶さんの場合はね
何をするにしても理由を考えるところがある
理由を考えるとどんどんどんどん
結果が悪い方じゃなくて良い方へ行きたいわけよ
Y字路でいくと どっちに行くか考えちゃう
でも右でも左でもどっちでもいいんです
どっちでもいいから行けば
Y字路の向こうで出会うんです
1本になるんですよ
だからどっちいってもいいんです
二瓶さんが面白いことをやればいいわけだから
見る人とか社会がどう考えているか
勇気づけるとか何とか
そんなNHK的発想をしたらダメよ
いい加減に作ったものが勇気づけられたりするわけだから
ーー横尾忠則さんの言葉
二瓶さんは、このセリフのあとのナレーションで「そんなことを今まで誰からも聞いたことがなかった」おっしゃっていました。
Y字路というのは、横尾さんの代表的な作品です。Y字路の分かれ道の画を幾つも描かれています。(横尾忠則 続・Y字路 – 横尾忠則現代美術館横尾忠則 続・Y字路 – 横尾忠則現代美術館)

今回の番組内でも、出身の加古川のY字路や作品がいくつも登場していました。
人生って、分かれ道の連続ですよね。選ぶのか、選ばないのかの2択を常に迫られています。
1つの道を決断した後でも
「あっちの方が正解だったのではないか」
「あの時ああしていれば」
パラレル世界の自分を想像して、嘆いてしまう。
私も人生の分岐点が数々ありました。
特に自身の退職の決断は、今でもそれが最善の決断であったのかと考えてしまうことがあります。
だからこそ、この横尾忠則さんの
「どちらを選んでも、Y字路の向こうで出会って1本になる」
という言葉はとても勇気がでるものでした。
選ばなかった方の世界を想像して落胆するのはもうやめです!

よく聞かれるような
”選んだ道を正解にしていくんだ”
という言葉は私にとっては少し重荷でした。
今日からは横尾派で生きていきます!
現在の表現者たちとの交流
番組の中では、何人もの人が横尾さんと対話するためにアトリエを訪れます。

哲学者と対話する青年のような雰囲気ですてきなシーンでした。
小説家 平野啓一郎さん
表現者は自由じゃないといけない
こちらは平野さんの言葉です。横尾さんと接する中でこのように感じたと言っていました。横尾さんは、「しかし 自由が目的になってもいけない」と言っていました。

『ある男』『マチネの終わりに』はどちらも映画で観ました。
また平野さんは三島由紀夫の本も書かれています。
建築家 伊東豊雄さん
伊東さんとの対話のなかでは「最後に残るのは第六感。第六感があれば創造できる」と言っていました。
伊東さんのことも知らなかったのですが、私のすきな図書館である岐阜市立中央図書館(岐阜市立中央図書館 – Gifu City Chuo Library)、みんなの森 ぎふメディアコスモスを手がけた建築家でした。

国内外の建築を手掛けている方です。
批評家 浅田彰さん
こちらも、浅田さんとの対話の中での言葉です。
「死ぬことも生きることも無責任でいい」

私は、「生きる意味」や目的を見出さないといけない
と思ってしまっていたのですが、この言葉に救われました。
とはいえ、とてもセンシティブなセリフです。
横尾さんの生きざまを少し垣間見たからこそ、
私にはこのセリフがとても重く感じました。
三島由紀夫との関係
私にとって三島由紀夫は、著作は知っているけれど読んだこともなく、有名な事件と顔写真を見た事があるだけ。かなり遠い存在でした。
番組では、横尾忠則が描いた三島由紀夫の登場する画を紹介していました。
これも一度見たら忘れられないインパクトのある作品でした。
作家 三島由紀夫
横尾忠則は三島由紀夫から以下のように教えられたと言います。
「人間が生きていく上で一番必要なのは礼儀礼節
それを守って生きていかないと、天に通ずる作品が生まれない
天に通ずる作品を作らなきゃ意味がないんだよ」

作品には礼儀や礼節はいらないけれど、人間には礼儀礼節が一番大切と、説きました。
三島由紀夫は横尾忠則よりも11歳年上だそうなので、メンター存在だったのでしょうか。
地元の友人たちとの交流
番組の最後に、故郷の兵庫県加古川を訪れて友人たちと川辺で写真を撮ります。このモチーフは、横尾さんが度々描いてきたものでもありました。
「これが最後になるかもしれない」
「今生の別れになるかもしれない」
「寂しいけどしゃあないな」
「元気でお互いに」

友人たちが横尾さんにかける言葉は悲しいけれど
どこかさっぱりもしていて
それも胸に迫りました。
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