『結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日(2008)作品紹介
森本好子(すーちゃん)…主人公。カフェの店長。30代半ばで独身、彼氏なし。
まいちゃん…かつてのすーちゃんのバイト先の仲間。美人。結婚して、現在妊娠中。
さわ子さん…すーちゃんのかつてのバイト先の社員。本社で経理をしている。40歳手前。13年間彼氏なし。ヨガ教室ですーちゃんと再会。実家暮らしで、母親と寝たきりの祖母の3人暮らし

今作は、さわ子さんにスポットライトがあたっていると感じました。
登場率が高いです。今の私がさわ子さんと同年代なので余計そう感じるのかもしれません。
自身の人生と恋愛、家族の介護…さわ子さん大変です…。
結婚もせず子供も持たず、このまま歳とっていくとどうなるんだろう……。夫なし男なし三十路半ばの「すーちゃん」の、将来に対する不安や人生に対する切実な思いを描いた異色の四コマ漫画。
幻冬舎HP 作品紹介より
心にのこったエピソード

今回も、付箋だらけになりました。その中から厳選しました!

読みたくなってもらえたら嬉しいです!
将来の心配をしすぎること byすーちゃん
老後が、遠い未来が
今ここにいる
あたしを
きゅうくつにしている
結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日
すーちゃんが月謝1万円のヨガ教室を通うことを躊躇うシーンです。その1万円を老後にとっておくべきなのかと思案しますが、このセリフがでてきて、ヨガを習うことにするのでした。

この気持ちわかる~!!
私は悩みやすいのですが、アドラー心理学の『嫌われる勇気』を読んでから、”今この瞬間”の大切さも重視するようになりました。
将来を不安視しすぎて、今この瞬間の気持ちが抑圧され続けたら、人生まるっと不安で終わってしまいます…。今を大切に生きたいものです。
自分のカラダを謳歌したい byさわ子
老いていくのは仕方がないけど、
ただ、
セックスはしたい
あたしのこのカラダを
もっと謳歌しておきたい
せめてそれくらいは後悔したくないって思う
結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日

セックス、という単語がでてきてドキリとした人も多いのではないかなと思いました。
でもとても正直なさわ子さんの気持ちだと思います。
ここでポイントになるのは、恋愛がしたい、ではないところではないかと思います。
”誰かに愛されたい”は無理かもしれなけれど、せめて”自分のカラダを謳歌したい”という域まで達しているのですね。切実さが伝わってきます。
女の身体の大変さと女からのセクハラ byさわ子
汗はともかく、
血を流しながら女は働いているのです
結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日
生理痛で辛いさわ子さん。既婚子持ちの先輩涼子さんに生理痛だと打ち明けます。すると、先輩が”子ども産んだら治ったから、さわちゃんも早く産んじゃいなよ”と言うのでした。

涼子先輩は問題外ですが、このようなハラスメントは世の中にあふれているのでしょう…。
この本は2008年に出版されています。今はもっとハラスメントに対する理解が向上していることを願います…。
さよなら、あたし byまいちゃん

さよなら、あたし
もうすぐ別のあたしになる
結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日

臨月のまいちゃん。すーちゃんとランチの帰り道に電車で揺られながら考えています。
私は出産の前後でで自分が変わってしまうという不安感は感じませんでした。
でも、バリバリ仕事をして、仕事を辞めて出産を控えたまいちゃんは、なにもかも変わってしまうというのが不安だったのかなと思います。
私はどちらかというと出産の痛みが心配でそればかり考えていました…。
一方、すーちゃんも、まいちゃんに興味があるフリをして話しているのでした。
既婚子持ちになるまいちゃんと独身のすーちゃんの対比は、このシリーズでちらほら出てくるエピソードでもあります。

気になる方は『すーちゃんの恋』をお読みください!
あたしはあたし byすーちゃん
あたしは、あたし
他の誰でもない
誰のものでもない
結婚しなくていいですか。すーちゃんの明日
『わたしを支えるもの すーちゃんの人生』の文庫版(令和4年)には、益田ミリさんとすーちゃんの特別対談が収録されています。そこで、すーちゃん自身が”わたしの芯になっているセリフ”と評していました。
3人ぞれぞれの悩みと気づき

独身、出産、介護…女性の人生と悩みと気づきがつまった1冊
出産も、介護も、女性だけのものではありません。
でも、身体的に拘束をうけるのは女性。介護担い手の多くは女性なのが実際ではないでしょうか。
今作は妊娠中のまいちゃんと、おばあちゃんを介護しているさわ子さん、そして独身のすーちゃんそれぞれが違った不安や悩みを抱えています。

最近、義理の祖母が亡くなりました。義母が「順番だね」と呟くのを見て、自分の両親の介護についてもよく考えるようになりました。だからこそ、老い、介護についての言葉がとても刺さりました。
ネタバレを含む感想
内容に深く触れていますので、これから読まれる方はご注意ください。

今回も思いが溢れすぎて本文よりも長いレビューになっています。自分の読書記録でもあるのでご容赦ください… (笑)
心に残ったエピソードでもあげましたが、
①まいちゃんとすーちゃんの関係

すーちゃんが”お腹に赤ちゃんがいる人に、それ以外の話題を振ることが失礼な気がして、赤ちゃんに関することばかり話して、疲れる”という言葉がありました。私はかつての自分が妊娠中自分もすーちゃんのように感じたことを思い出します。
そして、今度は自分がまいちゃん側になって、同じように独身の友人に思わせていたのかなと振り返りました。学生時代からの独身の友人に会ったときは、主に共通の趣味の話をすることが多いです。母ではない個人として話せていることも幸せに感じるのです。
②さわ子さんの見合い相手
先輩の紹介で知り合った男性。最初は好感触でしたが、何度目かのレストランでのデートで、男性の母が孫が欲しいから”出産できる証明書みたいなものをもらってきて”と言われます。そしてさわ子さんは、”病院できいてみるね。で、あなたは?”と返します。
この男性とさわ子さんが結婚しなくて本当によかった!
そしてこれはとても繊細な問題ですよね…。女性は子供を産むためのマシンじゃないと、政治家の発言が炎上したことを思い出します。結婚するまえに、子どもを持ちたいかどうかの認識が双方同じであるかの確認は必要ですよね。さらに互いが子どもを持ちたいと考えている場合に、互いに妊娠が可能かどうかの検査(ブライダルチェック)を受けてから入籍をするという話も聞きます。
私が一番いいなと思うのは、結婚後にもし子供が持てないことが分かっても、2人で人生を歩んでいきたいと思えるパートナーと出会えることでしょうか…。
③介護

別で暮らしているさわ子さんのお兄さん家族が実家にもどってくるシーン。お兄ちゃん家族はおばあちゃんに顔を見せに来ず、慣れて人に任せとけと寿司を食べます。「わからない人にはあいさつをしないでもいい?わからないのはいないのと同じ?
一方、すーちゃんが遊びに訪れた際、おばあちゃんが居ないことに気付いて、挨拶をさせて下さいといって挨拶します。するとおばあちゃんは「ごゆっくり」と返すのでした。
私の祖母は熊本にいます。遠方でなかなか会いにいけないまま認知症が進行しました。近くにすんでいる祖母の息子である私の叔父ですらわからない時があります。私が5年ぶりに会えた時、私の名前を耳元で伝えたら、おばあちゃんの記憶の扉が一瞬ひらいて、私の名前を呼んでくれました。
さわ子さんのおばあさんも、娘であるさわ子さんのお母さんのことを姉だと認識しています。さわ子さんの事はお姉さんだと思っています。
そうした中でも、すーちゃんが挨拶した際には「ごゆっくり」とあいさつができるのです。さわ子さんのお兄さんの無礼さに憤るさわ子さんでしたが、その後のすーちゃんの行動で少し救われたのではないかと思いました。

今回ご紹介した本はこちらです

その他のすーちゃんシリーズはこちらから!

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