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『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』世界と出会い直す1冊!!

読書

大学生の時に文化人類学を学んでいるはずなんですが、世界の変わった儀式などが思いだされるだけで真に学んだとは言えません…。

書店で平積みされていたキャッチ-な表紙につられて読んでみました!文化人類学ってやっぱりおもしろい!

”あたりまえ”なんてこの世にはないのかも…

あなたの思考を限界突破してその先の視点を教えてくれる1冊です!

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『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』

箕曲在弘さんは早稲田大学文学学術院教授で文化人類学・東南アジア地域研究が専門です。

もくじから…
  • 第1話 集団と親族 なぜ私たちは「よそ者」に冷たいのだろうか?
  • 第2話 家族と血 家族にとって血のつながりは大切か?
  • 第3話 贈り物と負い目 なぜ贈り物をもらったら、お返しをするのか?
  • 第4話 汚穢と禁忌 なぜ私たちは唾液を汚い!とかんじるのか
  • 第5話 儀礼と境界 なぜ「就活」はあんなにつらいのか?
  • 第6話 宗教と宗教心 日本人は本当に無宗教といえるのか?
  • 第7話 呪術と科学 なぜ不運なことが起きたとき「努力が足らなかった」と思うのか?

文化人類学視点でみると、そういう考え方になるのか!

というのがてんこ盛りでした。

そもそも文化人類学ってなに?

本書には次のような説明がありました。

文化人類学とは、人間の社会的存在としての特性について内在的・個別的・具体的に探究することで、人間がもつ文化の多様性を明らかにしつつ、人間としての共通性は何かを探究する学問である。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p253

文化人類学が研究対象とするのは、このような目にみえるものの背後にある、普段あまり意識していない行動パターンや意味付けです。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p15

暗黙のルールを見いだす

”普段あまり意識していない行動パターンや意味づけ”=暗黙のルール

その文化をもつ人々についてはあたりまえのことであるけれど、他の文化圏の人からみるととても特殊な行動である、というのはよくあることだと思います。

そしてその意味付けは当事者にとって必ずしも明確に意識されているわけではない、と著者の箕曲さんは言います。

人びとに直接尋ねても答えられない暗黙のルールは、それを共有していない人が実際に体することによって見いだすことができます。

”暗黙のルール”を見いだす為に、直接現場にいって見知らぬ集団の人間関係の中に身を置いて観察するのが文化人類学のフィールドワーク(参与観察)です。

”対する”ではなく”体する”というのが文化人類学におけるフィールドワークを連想させてグッときました!

第一に、文化人類学は「人間の文化がどれほど多様なのか」を問います。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p256

第二に、文化人類学は多様性をふまえたうえで見いだせる「人間としての共通性」について探究します。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p256

第三に、文化人類学は「文化的な多様性がどのように変化していくのか」を探究します。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p257

そんな不思議な文化があるんだ!おもしろいな、で終わらずに、人間としての共通性を見出して、そしてどう変化していくのかを探究する学問なのですね。私は学生時代はおもしろいな、で終わってしまっていました…。

私が面白いと感じたところ

この本の中には世界中の多様な文化が紹介されています。その中の一つをご紹介します!

贈り物と物々交換と負い目

パズルと人

なぜ贈り物をもらったら、お返しをするのか

このタイトルを見たときに、私は昨年のある出来事を思い出しました。

お隣の方から職場で作っているというコーヒーギフトをいただいたんです。

私は、玄関の扉が閉まった瞬間に

やばい!なんかお返ししないといけない!!!

という焦燥感にかられたのです。

すぐにお返しするのも、なんかやっつけ仕事みたいに思われるかもしれないとおもって、1週間ほどしてから菓子の詰め合わせをお渡ししました。お隣さんは「そんなつもりじゃなかったのに…すみません。ありがとうございます」と恐縮されていました。

また別のある時、今度は反対側のお隣さんにうちの畑で採れた野菜をおすそ分けするという事がありました。すると、渡したそばからお隣さんは「ちょっと待っててくださいね!」と家の中に戻っていって、今度は旅行のお土産をくれたんです。

その時私が考えた事は”野菜をもらったことに対して、またお礼をしなくてはいけない(ような義務感)をお隣の方は感じたくないから即座にお返しをくれたのかな”ということでした。

私の邪推にすぎません…。

が、わたしの思考回路だと早くこの義務感から逃れたいと思ってしまうのです。だったら最初から渡さなくてもいいような気もしてきました (笑)

嫌な隣人で申し訳ないです (笑)

物を贈るとき、わたしたちはあからさまな物々交換にならないように配慮して自発性を装っているともいえるわけです

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p83

パプアニューギニア島の腕輪と首飾りの交換

湖

この章で登場するのがパプアニューギニア島のトロブリアンド諸島の【クラ交換】です。

詳細はぜひ本書をお読みいただきたいのですが、クラ=交換と言う意味で、赤い貝の首飾りと白い貝の腕輪をそれぞれ反対周りに贈り合うという慣習のことを指します。

このクラ交換は今でも行われているとあるので驚きです!

クラは大変盛大に行われます。島には一般人と首長がいて、一般人は数人、首長は数十から数百人のクラのパートナーがおり、

(中略)

このためにわざわざカヌーから作り始めて、荒波にもまれながら命がけで航海するのです。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p86

クラ交換は日本のお歳暮みたいなものかな、と読み始めたら、とても大がかりなもので驚きました!!

この贈りものの話はさらに先を進みます。

贈り物はこのように人間関係をつくることに寄与する一方、ちょっとバランスを崩すと、主従関係をつくってしまう、危うい性質をもっています。人間は贈与がこうした危うい性質のものであることを、直感的によく知っています。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p96

この文を読んで思いだしたのが、心理学でいう「返報性の原理」です。

返報性の原理=自分に対して何かをしてくれた事に対してお返しをしなければならないという心理現象

私の隣人さんとのお土産の応酬もこの返報性の原理が根本にあります。

これを逆手にとって悪用することも世の中にはあるなと思いました。例えば、相手に小さな貸し(負い目)をたくさん作っておいて、自分の要求を断りづらくするような場合です。

これが本の中でいうバランス関係が崩れた贈り物で、主従関係をつくってしまうことに当たるのかなと思いました。

この他にも、贈り物に対する”負い目”を回避する技法についても事例が紹介されていてこれがまた興味深かったです!日本における「つまらないものですが」というのも関係しています。

面白いと感じたら、ぜひ読んでほしい!!

私は大学生の頃文化人類学の講義をとっていました。この本を読んだら、当時のワクワクした気持ちを想いだしました。

この世界にはそんな文化をもつ人々が暮らしているんだ!!

私自身の経験としてのお隣さんとの贈り物の応酬について一瞬考えたことがありました。それが本にでてくる”クラ交換”につながって、さらに負い目の回避までたどり着きます。負い目を回避するためのムブティという狩猟民とトゥルカナという牧畜民についての事例で以下の文がありました。

こうして人々は社会が階層化しないように配慮して、できる限り仲間内で平等を維持しているのです。

『自分のあたりまえを切り崩す文化人類学入門』p101

私はこの文を読んだときにとっても感動したんです。

平和を保つための文化なんだなぁと思ったんです!

第5話の儀礼と境界に登場するアフリカのンデンブ社会における首長就任のための”平民が首長を罵倒し続ける儀礼”も、首長が私欲を追求して平民を虐げない様に謙虚な姿勢を保たせるため、とあって同じことを感じました!

この他にも、あなたの世界を見る眼差しを変えるような発見にあふれている1冊だと思うので、おもしろいなと感じたらぜひ読んでみてください。

興味深かったワードを最後に羅列します!!

血穢、逢魔時、妻方居住、死霊婚、食物禁忌、アノマリー!!!

こちらもおすすめ!奥野克巳さんと吉田尚記さん『文化人類学ラジオ』

本を選ぶ人

『ありがとう』が無い世界?森の民プナン

巻末のブックガイドに奥野克巳さんの本『ありがとうもごめんなさいもいらない森の民と暮らして人類学者が考えたこと』(2018)が載っていました。

ポッドキャストで文化人類学の番組を探していたところ偶然みつけたのが奥野克巳さんとニッポン放送の吉田尚記さんの番組です。(Spotifyで無料で聴けます)

長年東南アジアのボルネオ島に住む狩猟採集民プナンの研究をしている奥野さんのフィールドワークに吉田さんが同行したようすを軽妙なトークで披露してくれています。

”ありがとう”という言葉が存在しないなんて、信じられなかったのですが、お話を聞いているとプナンに会いに行ってみたくなります!

難しい言葉は出てこなくて、気軽に聴ける番組です!

文化人類学をポップに楽しめると思います!

\Spotifyで無料で番組が再生できます/

\番組をまとめた本はこちらです/

悩みすぎるあなたにおすすめの記事あります!何かヒントが見つかるかもしれません

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